カーテン越しの朝日が差し込む窓辺で、開かれた真っ白なノートと手前に置かれた丸メガネ、蒸気の立つコーヒーカップ、小さな観葉植物が並ぶシンプルな風景
白いノートと丸メガネ、あたたかな一杯のコーヒーが迎える、静かな朝のくつろぎ時間。

気がつけば、60歳までちょうどあと1年。若い頃は「リタイア」の響きが遥か遠い先のこと、と感じていたが、ここ数年はいよいよその年頃に自分が近づいていることを感じはじめていた。

「これまで何か積み上げてきたものってあったんかな…」
過ぎてしまった時間についてあれやこれやと自問しても、モヤモヤするばかりで具体的な答えが浮かんでこない自分がいた。

そんなある朝、すでに仕事を退職していた僕は、仕事や学校に出てしまった後、あわただしさにため息をつきながらキッチンへ。そして、いつものようにコーヒー豆を計量してミルで挽き始めた。

ガリガリと音を立てながらハンドミルをゆっくりと力を込めつつ回す。ケトルから蒸気が立ちのぼり、ぽこぽことお湯の沸く音が響く。ブラインドのすき間から差し込む柔らかい光と、遠くから聞こえてくる小鳥のさえずり。

木製テーブルの上で、両手でヴィンテージ風の手動コーヒーミルを回しながら豆を挽いているクローズアップ
ガリガリと豆を挽く音に心が研ぎ澄まされる、“くつろぎ”への第一歩。

いつの間にか意識は集中し、無心になってハンドドリップを楽しんでいた。蒸らしの間の数十秒が、こんなにも心を落ち着かせてくれるとは思わなかった。
その時、ある思いのようなものがふと心によぎったーー

「こんな何氣ない、日常のひとときが心をゆるませてくれるなんてな…この平和な空氣、ありがたい。毎日こんな空氣を僕だけじゃなくみんなが吸えるようになったらええのにな~」

それが今から思うと、僕にとっての「くつろぎ」という言葉との出会いだったと思う。それは、ただ何もしないまま時間を過ごすことではなく、そんな何氣ない時間を思いのままに感じることで自分を許し、心を、感覚をひらくこと。

コーヒーを丁寧に淹れるひとときは、まさに「くつろぎ」の一日をはじめる小さな儀式。豆を挽く前の深呼吸、香りを胸いっぱいに吸い込む瞬間、一口目のほろ苦さをかみしめる時間──これらすべてが、心をゆるめて本当の自分と向き合う大切なプロセスだったのでした。

この「くつろぎ」の時間は、僕が毎朝やっているジャーナリングの時間とも続いている。たとえば、朝起きて一杯のコーヒーを淹れたら、ノートを開いてその感覚のまま書き始める。コーヒーの香り、湯気の温かさ、心の変化──それらが一体となった空氣をまるで文字に変換するかのように淡々と書いていく。それこそが頭と心に「書く深呼吸タイム」ということなのだ。

60年近くの人生で培ってきた知恵や経験…それはもちろん大事にしたい。そこに加えてこれからは「くつろぎ」を自分から意識して選び取ることが、さらなる彩りになるはず。たった数分でもいい。コーヒーを淹れる、深呼吸する、ペンを走らせる――その連続が、心の余白を生み、なんとなく日々たまっていくモヤモヤとなっている「不安」をなんとか乗り越え、新しい発想や安心感をもたらしてくれるのだ。

テーブルに開かれたノートに向かい、右手でペンを走らせ、左手でノートを押さえつつ、横に蒸気の立つコーヒーカップが置かれたシーン
コーヒーの香りとともに、ペンを走らせる“書く深呼吸”タイムで心を整えて。

仕事や家事、あれこれ頑張る毎日の中で、ふと「自分」を感じる瞬間がきっと誰にもあるはず。何かを日々成し遂げる、目標に向かって駆け抜けることも大切だけれど、その急流のような時間の中で見失ってしまったものが僕も含めあなたにもきっとたくさんあっただろう。

でもだからこそ、本当に大切なのは「自分を大切にする小さな時間」を意識的に増やすことかもしれない。それは今からでもできること。

そしてそれをこの先の人生で、「がんばる」だけじゃなく「くつろぐ」ことを選ぶ時間を、ぜひ少しずつ増やしてみること。そうすれば、あなたの“くつろぎ”が教えてくれる、新しい景色の中で静かに、だけどしっかり立っている本当の自分自身がきっといるはずだ。

ぜひ今日のどこかで、自分だけの「くつろぎ」を探してみてください。

(次回へ続く)

オンライン喫茶「くつろぎ」でこころをゆるめてください

オンライン喫茶くつろぎ
オンライン喫茶「くつろぎ」は、昔ながらの喫茶店をイメージしたオンラインカフェ。話すだけで心がほぐれる、“40代からのモヤモヤ”に寄り添うマンツーマンのお話スペース。元ラジオDJのマスターが静かにお迎えします。