プロファイルをごらんくださった方はご存知かと思うけれど
昔、10年ほど前に本を出させていただいた。
共著とはいえ自分の本を出すことはそれこそ夢だったので
実現しただけで本当にうれしかった。
実際に本になって手元に届いた後、プロモーション活動と称して
大手書店さんにあいさつ回り。
売り場に平置きされるのを見ていると
徐々に「いよいよこれが世に出る一歩になりそうだ」と実感が高まってきた。
Amazom3位になったものの…
そう思うと人間、欲が出てくる。
「Amazonキャンペーンなどやりたい」と
出版社の担当編集者さんに打診してみると
「この本はそういう売り方はよくないと思います。」
とじっくり売れていくことの方がよい、と進言いただいた。
当時は自分も出したことでハイになっていたので
「せっかく出したのに、そっちだって利益になるんじゃね?」
となんだか釈然としないモヤモヤ感を抱えていた。
実際、本は書店回りとSNSでの告知だけで
カテゴリ内だったがAmazonデイリーチャートで3位になった。
その後8回重版もされ、若干の更新をした次版も出してもらった。
ド素人としては1万部足らずで印税も少々いただけたので上々の結果だろう。
しかし残念ながら出版社側としての予想結果までは至らなかったようなので
その後声がかかることもなく、一瞬電子書籍になったものの、現在は絶版である。
出版をきっかけに、エージェント様からのご助力もあり、全国あちこち講演やセミナーに呼んでいただいた。
しかし、それとともに別の悩みが発生することになってしまった。
欲と同時に自分にダメ出し
なぜもっと売れないのか
なぜ生活がラクにならないのか
と思い始めてしまった。
なぜ人気が出ないのか
自分に何が足りないのか
努力の気持ちも湧いてきたが、同時に自分自身のアラ探しをするようになってしまった。
そんなことを考えだすとこれが不思議なものでなぜか変な人にも出会うようになってきた。
明らかにフェアじゃないビジネス話を持ち掛けられたりするようになってきたのだ。
最初はあたりのいい優しい人でも、申し出を断るととたんに豹変した。
自分の提案を受けないことでどれほどキミが不利か…私の現在過去未來、とにかく批判してきた。
携帯電話で2時間延々とそういう罵詈雑言を聴き続けたこともある。
その後私は精神崩壊し、一気にモチベーションが下がり、どこに行っても心ここにあらず。
その頃あるグループに参加していたのだが、そこでもあれこれ指摘されることが多くなり
だんだんとそこの人たちに何か言われるたびに注意されてもいないのに叱られている気持ちになり
ついに、涙が自然と出てくるようになり、隠れて泣いていたりした。
そして、私は自ら人を避けるようになり、また田舎の自宅に引きこもるようになってしまった。
自分の夢が叶い、あとは成功に向かっていくだけ。
これでやっと支えてくれた嫁はんや家族に喜びが与えられる…
そんな理想はあっという間にもろくも崩れ
ついにすべてのチャンスとご縁を自分で壊してしまったのだ。
自分を見つめ直して
今、その頃を知る人やあの時罵倒してきた人たちから見れば
こうして時給生活や無職を繰り返している私をきっと「ほれ見ろ」と嘲笑するだろう。
でもようやく私はそのような想像もまったくもって今の自分には何の役にも立たない、と感じられる。
その理由として、当時から今もおつきあいが継続している方もいてくださること。
そしてその経験からまた自分自身の心の再構築に向けて今日まで学び続けてきたこと、だ。
今思えばあの時、調子に乗ってキャンペーンなんぞやらなくてよかった、と感謝している。
あの時ですら得体の知れない輩や自分のポリシーに反することを強要されたりしたくらいだ。
もっと人気が出ていたら今頃こうやって生きていただろうか、と思わなくもない。
失ってはいけないものを見失わない
人気が出る、というそれ自体は華々しいことかも知れない。
しかし、同時に失うことも多いと確信する。
思うにそれは誰でもない「真の自分自身」を失うこと。
人気とは、自分の預かり知らぬところで増えたり減ったりする。
いわばこの世の中において、これほど頼りないものもない、と考える。
それは不思議とおカネの増減と連動している。
おカネもまた同時に頼りないもののひとつ、とも私には思えてならない。
この世に二度と生まれてくることのない自分自身は自分が信じる。
人気という評価がこの世の幻想の象徴を表すもの、と思えば
生きていくこと、自分らしくあることがずいぶんと、ラクになる。
自分のことを見ている人はなにより自分だし
まして自分以外にそんな人がただのひとりでもいてくださるなら
それはそれは望外にありがたいものである。
その場合に数の多少など問題にすらならない、のである。
さて今日の一曲
NO MATTER WHAT - BADFINGER
バッドフィンガー 1970年のセカンド・アルバム「No Dice」収録のヒット・シングル。
望外の成功に翻弄されたバンドといえば私は真っ先にこのバンドを思い出す。
1967年に世界で初めてアーティストによって設立したレコードレーベルとしてビートルズが立ち上げたAppleレコードから最初にデヴューしたアーティストのうちのひとつがこのバッドフィンガー(デヴュー当時の名義は「アイヴィーズ」)だった。
デヴュー曲はポール・マカートニによる曲、その後はジョージ・ハリスンとの時間が多くなり、次作の「Straight Up」のプロデュースやジョージ発起人の世界初のチャリティ・ロック・コンサートといわれる「バングラデシュ・コンサート」にもジョージのバックとしてビートルズの「Here Comes The Sun」を演奏している。
そんな華々しい活躍を見せながら、その成功とのギャップにマネジメントへの不信や訴訟問題なども起き、メンバーのピート・ハムが首つり自殺し、一時解散。そして再結成の数年後にはメンバー同士で版権訴訟が起き、まるでピートの後を追うように、オリジナルメンバーであった盟友のトム・エヴァンスも首つり自殺した。
そんなドロドロとして陰鬱な争いとは似ても似つかぬ美しさとタフさを彼らの曲の多くは備えている、と思う。
Appleレーベルにいたことで私のような地球の反対側にいる人間にも彼らのすばらしさが伝わったことは喜びに値する。しかし、彼らが抱えてしまうことになった多くの争いや憎しみ、悲しみ、命といった代償についてはいちファンの私などには到底及びもつかないものだっただろう。
いつの世の中でも「人気」「成功」とは罪なものだ、と思わざるを得ない
まさにその典型のようなグループである。
ちなみにこの曲の日本語タイトルは「嵐の恋」。
その後彼らに起きた「嵐」のような出来事を思うと…。
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